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【始めようか、天才観測】本阿弥光悦の大宇宙展。入った瞬間、作品で殴られた話(比喩)

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午前二時 フミキリに 望遠鏡を担いでった ベルトに結んだラジオ 雨は降らないらしい 二分後に君がきた 大袈裟な荷物背負って来た 始めようか天体観測 ほうき星を探して


ある日、部屋で過ごしていたら本の間から1枚のチラシが少しはみ出ている事に気づいた。私はそれを無の境地で隙間に押し込もうと…していたはずが、そこに並んでいた文字を目にして逆に引き抜き、
「え、これって…」と呟いた。
握りしめたチラシには「始めようか、天才観測。」と書かれていた。

そう、これはBUMP OF CHICKENの天体観測🔭の歌詞の一節、「始めようか、天体観測」をもじったものだ。まさか、天下の国立博物館様サマがダジャレかましてくるなんて…。
光悦のことはほとんど知らんけども、最近の博物館が攻めてるのか、博物館をおかしくさせる程に光悦がヤバいのか(いい意味で)、この目で見定める必要がありそうだ。私はこの瞬間、上野に天才観測に行くことを決めた。

午後二時、天才観測へ

午後二時。残念だが上野にはフミキリがない。
私は手のひらサイズの単眼鏡を担いで、スマホにかまけて二歩後ろを歩く君と東京国立博物館へ向かう。君はいつもの大ハデなリュック背負っていた。
「いつ見ても大きいなー」
真正面に見える1938年に完成した本館は、帝冠様式の代表的建築として重要文化財に指定された建物である。この本館を含んだ6つの建物からなる東京国立博物館(トーハク)は、東京ドーム2.2個分の広さを誇る博物館だ。その上に見える空も広い。今回の観測地点・平成館へと急ぐ。

始めようか、天才観測。「コウエツ」というほうき星を探して

平成館は、2階の階段を挟んで2つの展示室があり、大規模な企画展の時に使用されることが多い。今回の「本阿弥光悦の大宇宙展」は、大宇宙と銘打つだけあり110点もの作品が展示されている。

エモいキャッチどこいった?トーハク、人を作品でぶん殴る

会場に入って、まず最初に目に飛び込んでくるのは、今回の企画展のメインビジュアルにもなっているアレだ。
膨張したように膨らみ、その上に大胆に配された黒い帯。例えるなら海苔を巻いた玉子のお寿司だ。
さて、これが何かお分かりだろうか。
答えは、国宝「舟橋蒔絵硯箱」だ。今でいうペンケースだね。
うーん、これはかなり攻めた展示だ。信じられない。入ってきたお客を自己紹介と称していきなり目玉作品でぶん殴る?伏黒恵が「私、こういうものです。」と言いながら丁寧に八握剣異戒神将魔虚羅顕現させるようなものでしょ。
この企画展、油断ならない…。「始めようか、天才観測。」とエモさ匂わせといて、実はベジータとかそっち系の宇宙なの?

お寿司じゃなかった。異素材ミックスのおしゃボックス

とんだビックバンを序盤から喰らってしまったが、作品自体は確かにすごい。まずそのビジュアルに驚かされるものの、大胆さに反して実に繊細で美しい。
硯箱の蓋には、川に浮かぶ舟が並び、その上に、海苔…ではなく橋がかかっている。金粉と漆で描いた蒔絵の上に鉛を合わせる異素材ミックス!!くっーーー!!
さらに、その橋の上には銀で作ったなめらかな筆使いを連想させる文字が。そっかー銀かぁ。だから同じ金属色でもちょっと輝きが違うんだねー。よく知らないけど、光悦、アンタすげーよ。オシャレすぎる。(私の脳内は口調が少年漫画風になります)

結果、主人公キャラ・光悦作ラブレター製造機

で、ふと思った。これなんて書いてあるんだ?
調べてみると、「東路乃 さ乃ゝ かけて濃三 思 わたる を知人そ なき」と書かれてあることがわかった。
これは、『後撰和歌集』源等の歌「東路の佐野の舟橋かけてのみ思い渡るを知る人ぞなき」だ。ただ「舟橋」という文字が抜けている。「どうしたぁ光悦。天才じゃなかったのかー?」なんて思ってはいけない。光悦はうっかりしたわけではない、これは確信犯だ。
なぜなら文字が乗ってる場所こそが、「舟橋」ですからー。
うっわ!!こういう演出、見たことある!!
光悦「殿、こちらを…。」
モブA「おい、あれ舟橋が抜けてるじゃないか」
モブB「クックックッ。これであいつもおしまいだ」
殿「おぉ、これは見事。舟橋を硯箱そのもので表現するとは。余は満足じゃ」
こうして、光悦は窮地を見事な機転とおしゃれテクで乗り切ったとさ。
うん、これだ!!
失礼。妄想で思いっきり脱線したが、問題はその内容だ。
私は古文が苦手なので見てもさっぱり分からない。なので、その内容を知って驚愕した。

「東路の佐野の舟橋かけてのみ思い渡るを知る人ぞなき」
東国の佐野にある舟を並べた上を渡る舟橋という危ない橋をかけるように、思いをかけてずっと恋し続けているのに、それをあの人は知ってはくれないのです。

え、なんて切ない歌なの。
これ、超切ない恋の歌じゃないのよ。しかも「橋をかける」と「思いをかける」がかかっとる!!ここには洒落者しかおらんのか??
なんと、この大胆不敵な異素材ミックスおしゃボックスは、切ない恋心を全面に押し出した光悦によるラブレター製造機だったのか(個人的解釈です)。きっと渋面の武士がこの硯箱で恋心ダダ漏れの文を認めたんだろう。まさかのギャップ萌え…。
改めてお伝えするが、これは国宝だ。こんなアバンギャルドな国宝があるなんて。しかも甘酸っぱい。

光悦はアート界の陽キャチート

すっかり油断していた私は、全身で光悦砲を浴びてしまった。
うん、でもすごくよくわかった。これだけのセンスと遊び心を持った「舟橋蒔絵硯箱」を見せられたら認めざるを得ない。光悦は天才だ。
そしてトーハクよ、君の血鬼術はすごかった。普通は目玉作品を最初になんて持ってこない。だが、あえて最初に彼のすごさを凝縮した最高傑作を見せつけることで、真っ先に輝く宵の明星のように光悦の価値を示し、これから始まる大宇宙をこの星を頼りに進めと、そう我々を導いたのだ。

国宝でいきなりぶん殴られた満身創痍の体を叱咤し、私はやっと2作品目へと歩を進める。ここからが第一章の始まりだ。
光悦は刀剣鑑定の名門の家に生まれ、自身も優れた目利きであり徳川家にも一目置かれた存在だ。そして、俵屋宗達と共に琳派の創始者と言われている。
今回の展示作品が、刀剣・蒔絵・書・器など、一人の企画展のものとは思えないほど多岐にわたっていることからも、彼がどれだけアートに造詣が深かったかが分かる。横のつながりも強く、京都の鷹峯にアーティストが集まる光悦村も作った程だ。

こうなってくると、光悦はただの天才ではないな。アート界の陽キャチートだ。うーん、アーティストの集う村か…。今年観に行った愛しき陰キャの顔が浮かぶ。
この作品展は、光悦の美の世界を大宇宙として表現したが、彼の存在は当時の人からしたら時代を眩しく駆け抜けたスター(ほうき星)だったのではないだろうか…。赤く染まった上野の空を見上げて、そんな事を思った。そこには宵の明星が輝いていた。

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乙女のマストアイテム「恋心匂わせバッグ」1,320円なり

トートバッグ1,320円

レジ袋が有料化されて数年。世の中にエコバッグが溢れかえっている。
私のクローゼットもまた然り。なのにまた買ってしまった。勘弁して欲しい、こっちは引きこもりなんだ。そんなにバッグ必要ないんです。
でも…。でもでもでも…乙女の皆さんも国宝のエコバッグ欲しいよね?
だってこれは『一見国宝好きと見せかけた、恋心匂わせバッグ』なんですもん。そして男子あるいは女子の皆さん、待ち合わせの相手がこのバッグ下げてたらご覚悟を!!意味に気付いてしまったらもう逃げられません。
オフィシャルグッズは他にTシャツ、マステ、舟橋蒔絵硯箱キーホルダー、「おしゅしだよ」コラボグッズがある。

知らないモノを知ろうとして単眼鏡を覗き込んだ

今回の作品展は、天才観測だったので単眼鏡を持ち込んだ。

アート鑑賞を目的にしたもので、ポケットに収まるサイズですごく軽い。
作品展や仏像を見に行く時には欠かせないアイテムだ。
まだ、単眼鏡を使ってる人は少数派な印象だけど、なんでみんな使わないんだろう?これがあれば繊細な細工を見ることができて、感動も倍増。しかもちょっと玄人っぽい感じ出せる。
それにこの単眼鏡は、暗い展示室の中でも比較的明るい視界が保てるよう設計されてて、さすがレンズメーカー!!って感じなんだよね。
で、これ。普通に買うと1万円越えの商品なんだけど、今Amazonで最大36%オフ中(カラーで値段が変わる)。アート鑑賞や仏像鑑賞が好きならぜひ使ってほしい。きっともっと早く買えばよかったってなるはず✨

首から下げられて、メモする時も邪魔にならない

今回の「本阿弥光悦の大宇宙展」。ジャンルが幅広いので、予習あるいは復習をするか、オーディオガイド(今回、君が一緒だったので私は借りなかった)を利用するとより楽しめると思う。
「舟橋蒔絵硯箱」の話ばかりになってしまったが、鶴下絵三十六歌仙和歌巻も素晴らしかった。必見だ。他にも国宝や重文がたくさん展示されている。光悦にまつわる作品を一同に介した貴重なこの機会にぜひトーハクに天才観測しに行って欲しい。

「本阿弥光悦の大宇宙展」概要

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