山鉾スタンプは祇園祭オタの精神修行だった

ジリジリと刺すような日差しと熱気の中、
祇園祭の宵山を見に来ていた。
「あづい…」
毎年来ていても、
この暑さには慣れない。
少し休憩にしよう。
そういえば近くにNHK放送局があったはずだ。

「あ、ちょっと涼しい」
ベンチで一息つきながら、館内の祇園祭の映像をぼんやり眺めていた。
山鉾スタンプという文字が見えた。
おもしろそう。
興味がないという友人に荷物を任せ、いそいそと向かう。

大きな台紙には周辺の地図。
なるほど、自分で鉾町のマップを作るのか。
祇園祭オタに対する挑戦状か。
ふはははっ!受けて立つ!
やはり最初は長刀鉾だな。
くじ取らずの山一番だ。
ドキドキドキドキ…ぺたっ。
ゆっくりハンコを持ち上げる。
あぁぁぁぁぁ!!!!!
めちゃめちゃにブレていた。
私の長刀鉾ぉ…

武者震いか、はたまた
祇園祭オタの浅ましい心の現れか。
この会場の誰よりもきれいに押したい。
あわよくば、子どもたちに
「あの人、うまっ。」と思われたい。
そんな気持ちが印影からダダ漏れだった。
うぅ、羞恥!
拙者、新しい紙が欲しいでござる。
積まれた真新しいマップに手が伸びかける。
……いや、ダメだ。
私は大人として、この恥を背負わねばならない。
子どもたちに示しがつかない。
誰も見てないが。
己に課した試練と戦いながら、
山鉾の名前を見ずにスタンプを押すというmyルールで、地図を完成させていった。
悪くない勝率である。
気づけば夢中でスタンプを押していた。

まさか祇園祭オタは、知識だけでなく精神まで試されるとは思わなかった。
私は背筋を伸ばし、友人の元へ向かった。
「お待たせ。残りの山鉾の道案内は任せて!」



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