【泊まることで、建築を継ぐ】全国の“泊まれる名建築”②|建築家の美意識に泊まる宿3選

建築を「作品」として残すだけでなく、「暮らしの中で感じる」時代へ。
名建築をリノベーションし、設計者たちの思想が“宿”として息づく場所が増えている。
光、線、祈り──建築家の美意識に触れる旅へ。

当記事がブログ村注目記事ランキングで2位になりました。ありがとうございます!
建築家の美意識に泊まる
─“設計”という芸術を、宿泊で体験する。─
葉山加地邸(神奈川県・葉山町)
三角と六角、そして水平線。
幾何学が重なり合うこの家は、建築という名の遊び心でできている。
海を望む展望室に立つと、フランク・ロイド・ライトの思想が、
遠藤新の手によって日本的な“縁(えん)”のかたちに結ばれているのがわかる。
せり出した水平の屋根や大谷石を使った幾何学模様の柱はまさにフランク・ロイド・ライトの提唱したプレーリー・スタイル。
当時の意匠を極力生かしながらも、神谷修平による改修で現代的でより洗練されたモダンさが加わった。壁に施されたダウンライトなど新しさにも「空間と一体化し、光と影でドラマを演出する」哲学を感じることができる。
ハニカムのテーブルに三角のスツールたち。全一の思想が遊びに昇華している。
1928年設計/国登録有形文化財/遠藤新・神谷修平
偏愛コメント:随所にフランク・ロイド・ライトと遠藤新みが溢れてる。遠藤も設計する時、楽しくて仕方がなかったんじゃないかな!作り手と依頼主のワクワクがこの建物の温もりになっている。
ホテル イル・パラッツォ(福岡県・中洲)
アルド・ロッシという詩人は、福岡の地に、永続する舞台装置を設置した。
その内側で、内田繁が“祈りの光”を演出し、美の対話が始まる。
再びRe-Designされ、いまも新しい詩が紡がれ続けている。
日本の寺院や教会から着想を得たファサードは、神殿のようであり、寺院のようでもある。窓を一切配置しないことで、外部のコンテクストから切り離す結界の役目も果たしている。
中央奥の黄金のファサードは、「Re-Design」プロジェクトを機にこの場所に移築したもの。ホテル全体をデザインの「実験場」「美術館」とした内田繁のコンセプトを見事に継承した空間となっている。
2023年の再オープンに合わせて作られたエントランスの突き当たりには、内田繁デザインのフラワーベースが。幾何学的で近未来的な空間に、有機的なラインが神秘性を与え、祈りたくなるような雰囲気。
内田氏の巧みな光使いが活きている廊下。壁面の照明から生まれる光と影のアーチとストライプのカーペットがリズムを生み出し、外観の世界観とつながっている。
1989年開業/日本初のデザインホテル。アメリカ国外で初のアメリカ建築家協会(AIA)名誉賞受賞/アルド・ロッシ、内田繁
偏愛コメント:日本にこんな実験的で贅沢なホテルがあることに感動。実は日本にあるロッシの作品はここだけではないが、これほど彼の理念を完璧に具現化した建物も、正しく引き継いでいる建物も他にはないんじゃないかな。
Izu Cliff House(静岡県・伊豆市)
建築という枠を越えて、海とひとつになる場所。
光と風、朝と夜。時間の移ろいが、そのままデザインになっている。
ただそこにいて、静かに流れる一日を味わう。
1960年代に大学教授とフランス文学者の夫妻が構想したヴィラは、今では新しく建物を建てることが許されない、国立公園の自然保護区にある。
崖に立つガラス張りのモダンなヴィラは、あえてカーテンをつけず開放的に。
2階には、畳の空間も。建てられた当時の雰囲気を残しつつ、現代にもマッチした雰囲気にリノベーションされている。
クリフハウスというだけあり、遮るものがない絶景が最高に贅沢。この景色が都心から3時間で手に入る。
1960年代構想/国立公園の自然保護区内に立つモダニズム建築
偏愛コメント:POPYE(ポパイ)やSNSで見て一目惚れ。旅の目的地としてただただ1日の移ろいを眺めていたい。
建築の美意識は、形ではなく“心の記憶”として残る。
光をどう取り入れるか、影をどう生かすか。
その一つひとつの選択が、泊まる人の記憶と重なっていく。
建築を継ぐ旅は、きっとまだ続いていく。
この旅は、前章「歴史を再生する宿」から始まりました。
まだ読んでいない方は、そちらも覗いてみてくださいね。

今日の偏愛航海、いかがでしたか?
記事が「なるほど!」「ほーほー!」と思ってもらえたら、
↓こちらから “ほーほー隊”の偏愛エール、ポチッとお願いします
“ほーほー隊”の偏愛エールとは?
当ブログを読んでくれてる方は誰でも”ほーほー隊員”。バナーを推すとブログ村のランキングUPに繋がります。まいが大喜びするボタンとなってます
