【泊まることで、建築を継ぐ】全国の“泊まれる名建築”①|歴史を再生する宿3選

かつて、街を見守ってきた名建築たちが、
いま“宿”として再び息を吹き返している。
この特集では「歴史を再生する宿」「建築家の美意識に泊まる」「物語を継ぐ宿」の三章にわたり、日本各地の“泊まれる名建築”をめぐる旅をお届けします。
今回の第一章は、再生によって新たな命を得た建物たちです。
歴史を再生する宿─保存×再生×現代性。建築の呼吸を未来へ。─
“泊まれる名建築”が、
日本各地で静かに増えている。
それは、新しい文化の継承のかたち。
新たな役割を得た建物たちは、重ねてきた深みと現代的な軽やかさで迎えてくれる。
遠くから眺めていた建物の中で、
彼らが見守ってきた数々の物語に耳を傾け、建物の記憶を辿る、
そんな旅が、今始まろうとしている。
エースホテル京都(京都府・中京区)
かつて電話局だった煉瓦の壁の中に、音楽とコーヒーの香りが満ちている。
隈研吾とコミューンデザインが描いたのは、“京都の日常に開かれた文化装置”。
外から内へ、時代から時代へ──建物は、いまも通話を続けているようだ。

手前が近代モダニズム建築の先駆者である吉田鉄郎が手掛けた「旧京都中央電話局」、奥が隈研吾による新館。

木材をふんだんに使った空間は、都会的でありながら温もりがあり、肩の力が抜けるような心地よさ。

カーテンや一部のファブリックには「ミナペルホネン」のものが使われている。

KOSAではエースホテル初のアフタヌーンティーが楽しめる。現在は「ジミー大西氏と旅するアフタヌーンティー」を開催中→(一休.com)
※2025年10月現在
2020年開業/旧京都中央電話局/吉田鉄郎・隈研吾・コミューンデザイン/「East Meets West」がテーマ
偏愛コメント:日本好きアメリカ人のお部屋のようなMIX感。
なんでも馴染んじゃうNIPPONの包容力に、心までほどける。
TOYOOKA1925(兵庫県・豊岡市)
豊岡の街に佇む、旧兵庫縣農工銀行の石造りの建物。
渡邊節の設計が生んだ重厚な外観の内側には、アールデコのモダンな息づかいがある。
通帳ではなく記憶を預ける場所──そんな比喩が似合う再生建築。

洋風建築の名手と言われた渡邊節らしい、ルネッサンス様式の外観やエントランス。

剥き出しの天井や配管がモダンで、かつての銀行建築とは思えない軽やかさ。大きな窓から入る光と落ち着いた雰囲気の家具も相まってコージーな雰囲気だ。

開放的な吹き抜けを備えたメインホールには、アール・デコテイストのタイル。
2024年開業/旧兵庫縣農工銀行豊岡支店(国登録有形文化財)/渡辺節
偏愛コメント:シンメトリーで銀行らしい実直な外観からの、
メインホールのタイル床の大胆さ!同じく渡辺節が手がけた神戸商船三井ビルも2027年には閉館予定。今後の展開に期待したい。
丸福樓 -MARUFUKURO-(京都府・下京区)
かつてトランプを作っていた任天堂の旧本社に、
新しいカードが切られた。
外壁には昭和の意匠が息づき、内側では安藤忠雄の光が静かに反射する。
手札のように並ぶ客室ひとつひとつが、過去と未来のあいだで物語をめくっていく。

任天堂旧本社時代からの外壁はオリエンタルな雰囲気。玄関には英語で書かれた当時から看板もあることから、海外を意識したデザインだったのだろう。

既存棟はレトロな雰囲気を生かした内装。トランプを作っていたことから、棟にはそれぞれ絵柄(スート)の名前がつけられている。

全ての客室で内装や調度品が違う。
新館は安藤忠雄らしさ全開の光と無機質のコントラスト。

アメリカの禁酒法時代のような重厚な雰囲気のラウンジ。こちらではソフトドリンクのほか、アルコールもフリー。
2022年開業/任天堂旧本社(1933年竣工)/安藤忠雄
偏愛コメント:和と洋。大胆さと無機質。光と影。コントラストをあえて残したまま、融合しているのがおもしろい。近くの銭湯もおすすめ。
↓丸福樓の物語を、もう少しだけ覗いてみませんか?

名建築に泊まるということは、
その物語の中に、自分も登場人物として足跡を残すこと。
それは保存ではなく、継承でもなく、
ひと晩だけ“その建物と共に生きる”という体験だ。
旧上野市庁舎の「泊船」から始まる再生の流れは、
帝国ホテル京都、星のや奈良監獄へと続いていく。
建築が新しい物語を語り継いでいくように、
わたしたちもまた、その物語の一部として呼吸していけたら。
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