偏愛文化考察
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【加賀前田家展】一族の真のお宝に気付いたら沼だった

まい(Maiko)
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最初は、おもしれー奴って思ったんだ。
でも気づいた目が離せなくなった。
前田家、お前ってやつは。

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前田くん家のタペストリーが見たい

上野の東京国立博物館で、加賀前田家展が開催。
たまたま、そんな話題を目にした。

加賀?金沢か。興味ないな。

が、1秒後にはこう思っていた。
待ってて、トーハク!必ず行く!

その時、私が目にしたもの。
それは重文指定・
ベルギー伝来のタペストリーだった。

江戸時代に伝来したシリーズもの。
一部は京都・祇園祭の懸装品に使われている。

前田家も持ってたんか!しかも唯一の完品!?
歴史ロマンだだ漏れSSSアイテム。
拝まずに死ねるか!

前田家おもしれー奴伝説

突然だが、私は企画展において
ベスコンで望みたいタイプだ。
故に、予習を欠かさない。

企画展での予習のお供と化してる時空旅人

時空旅人の前田家展特集に
気になるキャプションを見つけた。

加賀前田家の祖先が菅原道真、だと!?
最近の私のお気に!最推し、Myメンじゃないの!
(神様です!)

だが、何か気になる。どういう繋がりが?

調べてみると、この”菅原子孫説”。
どうやら自称の可能性があるらしい。
しかも、それ以前は平家や源氏を名乗ってたこともあるとか、ないとか。
祖先が変わっとるやないかい!

無茶苦茶やな!加賀前田家。
だがおもしろい。おもしれー奴枠認定だ。

Myメンの感動ストーリーはこちら
なぜ5月16日?太宰府天満宮の仮殿から見えた、1000年越え友情物語
なぜ5月16日?太宰府天満宮の仮殿から見えた、1000年越え友情物語

筋を通す心意気や、ヨシ!

噂通りならば、ずいぶん大胆な風見鶏だ。
だがしかし、この加賀前田家はその徹底ぶりが素晴らしかった。

当時、菅原の末裔を含む京都の公家たちは、実はめっちゃ貧乏だったらしい。
そんな末裔に、前田家は、莫大な経済援助を申し出て、本家からの公式お墨付きを無事ゲット。
タダ乗りしない精神、それでこそ武士道!

しかも、菅原道真に目をつけたのも戦略的にうまい。
祟りからの神昇格。
考えうる民間人最高峰の祖先では?
しかも賢キャラ。

加賀前田家、やるなぁ。

菅原道真公を埋葬する図。太宰府天満宮宝物館にて

なんだ、この出品目録は

予習を終え、いざ東京国立博物館・平成館。
この会場を使うのは、出品数が多い時だ。
期待値、爆上がる。

ん?

入り口で手に取った目録に違和感を覚えた。
重い?

ペラ、ペラ、ペラ。
ペラペラペラペラーーーー!
ちょっ、12ページあるよ!?

なんと出品数、約240点。
そのうち国宝は20点以上。想像の斜め上。

加賀前田家、何者だよ⎯。

加賀前田家、ぱねぇ

そして、ワクドキのファーストインプレッション。

はい、出ました。
最近よく見かけるスタイル。
メインディッシュから行く奴ですね。
もう慣れました。

重文・金小札白糸素懸威胴丸具足 前田利家所用が暗い会場の中黄金の輝きを放つ。

が、待ってくれ。奥にまだある!兜!鎧!兜!鎧!
え、ぐうかわ!鼻紙ポッケついてるやん!
いや、とんがり頭の兜どんだけ持ってんねん!
ナマズモチーフお気に入りか!

ここは大人のキディランド。はしゃぐはしゃぐ。

前田家伝来の文化財たちの大洪水。
海外伝来の端切、茶道具、羽織、図録、写本、螺鈿細工、巻物…。
ジャンルもすんごいの!

もちろん、当初の目的タペストリーも最高だった。
寄って引いて。覗いて眺めて。心の中で撫で回した。

個人的に一番好きだったのは螺鈿細工の硯箱だ。

人生最高螺鈿レベル。
さっきまで兜ではしゃいでいたくせに、気づけば単眼鏡を握りしめていた。

螺鈿による梅のモチーフが素晴らしかった。
青白く光を反射する様は、冬を耐えて咲いた小さい梅の花が月光を浴びたように儚げ。
レンズを覗きながら、何度ため息が漏れただろう。

企画展の最強の相棒。今回も大活躍。これさえあれば小さい梅モチーフも看破!

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加賀前田家、時代の先端をいく

加賀前田展。撮影可能エリアにて。壁紙は駒場にある旧前田家本邸を再現したものだそう。そちらも訪れてみたい

それにしても⎯。
改めて会場を見渡した。

本当にすごい数だな。しかもどれも素晴らしい。
全く飽きない。時間が許す限り眺めていたいほどだ。
そしてどれも状態がいい。

だが、不思議じゃない?
100万石の外様大名とはいえ、1つの家がこれほど貴重な所蔵品を、しかも大量に持っているという事実が。

私は、それこそが今回の企画展のキーなんじゃないかと思った。

ルノワールのアネモネ。抑えるとこキッチリ抑えてる!

今回出品されたものは、
前田家が個人的に持っているものではない。
加賀前田家伝来の文化財は、「前田育徳会」が管理している。

設立されたのは大正時代。
もちろんこんな組織、それまでの日本にはなかった。
日本の文化財史におけるパイオニアである!

ちょっと想像してみよう。

重い相続税、関東大震災、世界恐慌。
時代は文化財暗黒期。
旧大名家や公家(華族)たちは、次々と家宝を手放さずにはいられなかった。
海外流出もあったかもしれない。

そんな中、画期的な戦略で、先祖が愛し大切にしてきた品々を守ってきた「前田育徳会」。

うぅ。今、目の前に並ぶ品々の辿った歴史を思うと胸が熱くなる。
お前たち、よくぞ!(誰目線)。
気づけば目録をぎゅうぎゅうと握り締めていた。

モーツァルトやシューベルトの直筆の楽譜まで。美的好奇心の守備範囲よ!

加賀前田家の真のお宝

(心の中で)咽び泣きながら会場を進む。

後半は細々としたものが多い。
しかし、これもまたおもしろい!むむむ。

刀につける小さな飾り、組紐や釘隠しの技法見本⎯。
美しいのはもちろん、資料的価値もすごそう。

守らなければ、残っていかない技術。
そのことを正しく理解していなければ、作ることも受け継ぐこともない資料だと思う。

最適解を引き当てる能力、
時代の先を読む力、やり通す心。

加賀前田家、すごい一族だ。

ふと、ぎゅうぎゅうになった目録に目を落とす。
そこにはこう書かれていた。
「百万石!加賀前田家」

あ…。

私はなんだか泣きたくなった。
こんなにたくさんのお宝を集めて、伝えたかったこと。
それは”愛”かもしれない。そんな気がしたから。

はじめ、前田家の真のお宝は、加賀前田家の持つ才能や人材かと思った。

でも、それまで見てきた展示品は大事に守られていた。つまり愛があった。
振り返ってみると、彼ら一族の全ての原動力は愛なのかもしれない。

家族を守りたい。
家族が集めたものを守りたい。
美しいものを後世に残したい、領民を守りたい⎯。

私にはそんなふうに思えた。

だからここに展示されてるものは、
全部加賀前田家の”愛”の歴史なのかも。

こんなの、好きになるに決まってるじゃん。
気づけばそこは、偏愛の沼だった。

フランソワポンポンのシロクマ。前田家当主が直接パリのアトリエで注文したとか。センスありすぎだろ!

博物館の帰り道、
沼落ちした私は、あることを思い出した。

あ、そうだ。推し活しに京都行こう。

いや、何言ってんの?加賀は石川だよ?そう思った?
えぇ、知ってますとも。

実は、19代目御当主は、
現在京都の老舗・イノダコーヒの社長をお勤めになっているそう。

あそこはコーヒーはもちろん、お料理もおいしい。
おなかも膨れて、推し活もできる。
実に合理的だ。
私も前田家に倣って、最新スタイルでいこうと思う。

あー久しぶりにスープ飲みたいなぁ。
程よく疲れた脳は本能に忠実だった。

今年は空海や大徳寺展もあるぞ。上野があちぃ!

本日の偏愛品

時空旅人 2026年5月号
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