あぁ諸行無常。チート坊主・空海が手がけし圧倒的国宝「高雄曼荼羅」@神護寺展
熱い。といっても熊谷の話ではない。
仏教だ。仏教が熱いのだ。
6年もの修復を終えた大曼荼羅が、東京にきている。
創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」だ。
仏教の中でも、激アツ・パーソン、空海。そして密教。
これに滾らずして、何に滾るというのか…
ヒミツ、ヒミツ、秘密の神護寺は真言密教のお寺♪
神護寺は、京都の北西、紅葉の名所・高雄にある真言密教のお寺。空海が日本に帰ってきたのち、活動の拠点とした場所だ。
真言密教とは、仏教の一つ。「秘密の教え」とも呼ばれている。
密教の本尊は、仏教の宇宙の真理である大日如来だ。しかも大日如来直々に仏の世界の言葉で真理を直接説いたとされている。それは人間の言葉や文字では簡単に理解することはできないものなんだそう。また、修行しないと成仏できない一般的な仏教と違い、密教では大日如来と一体になれるよう修行を積むことで、生きながらにして仏になり悟りの境地を開けるという。
ちなみに「秘密の教え」とは、大日如来が説いた教えや作法のこと。とはいえ秘密なので、授かった者以外には詳しいことは公表されない。
宇宙が語りかけてくる…なるほど。
圧倒的な高雄曼荼羅は大日如来の宇宙そのもの
密教のお寺だけあり、他の企画展とは違う味わいがある。金銅密教法具3点セット(金剛盤・五鈷鈴・五鈷杵)を見た時は思わず「デュフッ」と声が出そうになった。そう、空海が手に持ってるアレ(金剛杵)。煩悩や災いが消えちゃうお助けアイテムだ。これだけでも充分に元がとれた、と思わずオタクな笑みが溢れた。
とはいえ、一番の目玉はなんと言っても「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」だ。
空海が作成に携わったとされる現存最古の「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」。そしてそれを元に作られた、「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」摸本。
まず驚くのはその大きさ。博物館の天井に届きそうなほどだ。薄明かりの広い会場、突き当たりに展示されたそれは、遠くから見ても圧倒的な存在感がある。
近づいてみると、濃紺のようなブルーグレーのような台紙全体に金泥が鈍い光を放っている。それはまるで宇宙に瞬く星々のようだった。
6年に及ぶ修復を終えた「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」は、それでもところどころ絵が消えている。逆にそれが長い年月を感じさせ、息をするのを忘れてしまう程の存在へ昇華させていた。
『まさに大日如来の宇宙そのものだ』心の中でつぶやく。
曼荼羅の中心には大日如来。何万光年先の星の光のように1200年の時を越えてもなお私たちに語りかけているのだろうか。私はその光の先にあるものを知りたくて、目の前の宇宙をもう一度見上げた。
「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」摸本は、元の曼荼羅と比べるとかなり状態がよく、古さを全く感じさせなかった。紫の地に墨と金泥のみでびっしりと描かれた絵は驚くほど精密。見ようと思って向き合わないと見えない。極彩色のイメージが強い曼荼羅が多い中、色が絞ってあるこれはより特別な存在に思えた。(墨は下絵だったのかも)
地の紫色は紫根と呼ばれる貴重な植物「ムラサキ」の根が使われている。 キレイで上品な色だ。専門家に言わせると、これは信じられないことらしい。この曼荼羅に寄せられた強い想いがこの事からも伺える。
すっと単眼鏡を構える。ぼやけた視界が晴れて目の前に美しい仏の姿が現れる。繊細な細い線で描かれるそれは今まで見たことがないくらい素晴らしかった。夢中になって見続けた。人が少なくてよかった。
そして何より興奮したのは、法具も描かれていた事だ。しかもそこからオーラみたいなのが出ていた。今までも曼荼羅はいくつも観たけど、あんな風に描かれたものを観たのは初めてかも。密教だけなのだろうか。というか初めて気がついた。全く自分は今まで何を観ていたんだ。我ながら呆れる。今度どこかで観る機会があったら注意しておこう。
神護寺の仏像もそれは素晴らしかった。独特のほんや〜っとしたような表情が掴めないような現存最古の五大虚空蔵菩薩坐像。円を描くように安置されたそれらを観るため、私は魔尼車の如く何度も何度も回った。反対に威圧がすごい四天王立像も大変よかった。高い台からギラついた目で見下ろされてる感が最高。照明で増長天の目が光る。あの展示担当者と原監督ばりのグータッチしたい。
チートofチート=空海の56億7千万年宇宙の旅
今回の企画展を見て思った。
空海はチートofチートだ。
日本中どこにでも出没しマルチすぎる才能発揮したという空海にホンマかいな?という気持ちがあったが、あの曼荼羅を見て確信した。ありゃあ、とんでもねぇチート坊主だ。
実は「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」自体も、空海が持ち帰った曼荼羅を元に作られている。あの曼荼羅のベースになった曼荼羅…ゴクリ。空海とんでもないものもらってんじゃん。さすが、3ヶ月で師に認められただけある。めっちゃ恵果のお気にじゃん。
いや、冗談抜きで本当にすごい人なんだなって思った…。杖ついたら温泉沸いたとか、そういうのじゃない、ガチ偉業をこの目で見た。
しかも、空海も絶対1回以上は触っただろうし、何度もこの曼荼羅を見たんだろうなと思ったら、今、自分も同じもの観てる。同じ目線に立ってる(物理)、そのことに感動する。空海は本当にいたんだ!
ところで、あなたは知っているだろうか。空海が今も生きてるという事を。
しかも「56億7千万年後に、弥勒菩薩とともに人々を救済するためにこの世に現れる」宣言したらしい。ちなみに今は、高野山・奥の院にてチル中。いや、実際何してるかは知らんけど。まだまだ復活まで相当時間があり、私は残念ながら今生で生空海を見ることは叶わなさそうだ。
今頃、空の海を旅しているのだろう、その人に来世で会える事を願おう。
あぁ諸行無常。もしかして今ワタシ、真理の扉開いちゃった?
家に帰り、企画展の復習。オタ活の基本は理解、分解、再構築だ。
「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」について考える。
『あの曼荼羅、修復はできたけどあとどのくらい保つんだろう。』
ところどころ、というか素人からしたらよく修復できたなってレベルだった。修復が遅れていたらあの仏画はもっと曖昧になっていただろう。そして何が描かれていたかもわからなくなったら、段々と人の心の中からも消えて。そうなったらどうなってしまうんだろう。なんだか壮大な不安が押し寄せてくる。それらを振り払うようにブンブンと頭振って、調べものを再開する。思考に耽っていたら、いつの間にかまたあの満天の星空を思い浮かべていた。
あぁでも「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)唐櫃」があるから無くなるとは違うか。そうか、だから摸本を作るのか。でも元の曼荼羅は失われてしまう、それはやっぱり勿体無い事だな。
とそこまで考えて気が付いた。
あれ、これが『諸行無常』?
あの曼荼羅が朽ちても、それに囚われる必要はない。その役目は次の曼荼羅が担っていくし絵も残っていく。今はキレイな曼荼羅もいずれ雰囲気のあるものに変化するだろう。
そうだ、最古の曼荼羅も密教という流れの中のひとつに過ぎないのだ。「一は全。全は一」かの錬金術師もそう言っていた。一即一切だ。全ては56億7千万年後に繋がっている。
あら〜もしかして今ワタシ、真理の扉開いちゃった?口元が緩む。
何を隠そう、私の特技は自画自賛だ。
解釈が合ってるかどうかはわからんが、思考がどんどん加速する。沼をこれ以上掘り下げるな、オレよ。煩悩を取り払う宗教に触れているのに、探究の欲が泉の如く溢れ出る。君は沼じゃなかったのか?己との対話も欠かさない。
あぁ神様仏様、どうか迷えるこの私に空海とおそろの金剛杵をお授けください!!
見上げたLEDライトの光は一番星の如く輝いていた。
神護寺展、ココが気になる
ところで、神護寺展で1つすごく見過ごせない展示物があった。
「大般若経」だ。
紺紙に金泥で書写した一切経の一巻で、「神護寺経」とも呼ばれる。
表紙の見返しが展示されているんだが、その絵が気になってしょうがない。釈迦如来の説法の様子が描かれていて、仏様たちの上には須弥山だろうか山と空。その空に奇妙な物体が浮かんでいる。
十字架にリボンが結ばれたような形がふよふよと浮かんでいる。
こ、これ。解説ないけど、大丈夫なやつ??
私にはこれは天使に見えちゃうんだけど、迦陵頻伽ってことだろうか?
私の絵が下手なんじゃなくて、まさにこのまんまなんで、ぜひ会場で見てみてほしい!!
神護寺展のマストアイテム、単眼鏡を持て!!
神護寺展の最大の目玉・曼荼羅を見るのに必須なのが、単眼鏡だ。
これがあるのとないのとでは、楽しみが倍違うと言っていい。
私が使っているギャラリーアイは、その名の通り美術鑑賞を目的としてるから、暗い場所でも光を十分に集められる設計で、視野が明るい。特に高雄曼荼羅のように暗い作品でもよく見えた。お寺でも使ってみたが暗い本堂でも問題ない。
しかも手のひらサイズですごく軽い。首から下げても疲れないし、ポケットに入れてても全然邪魔にならない。
だが、最大のメリットは、曼荼羅の仏様、1尊1尊の表情の違いを楽しめる事だ。ガネーシャを見つけることもできた。マジ最高。
元々レンタルで時々借りてたんだけど、もう手放せなくなって購入を決意。メーカ直販サイトだと13,200円なんだけど、Amazonや楽天だとかなり安くてもっと早く買えばよかったと思った。
仏像や博物館、アートが好きな人は絶対持ってた方が楽しい。
双眼鏡は?覗く穴が2つじゃダメなんですか?
白いスーツが目に浮かぶような事を言ってしまったがそれはさておき、人が多い場所では正直オススメしない。双眼鏡は両目を覆ってしまうので、周りの人に注意を向けるのが難しい。無防備すぎる。トラブルの予感がビシビシする。
その点、単眼鏡は使う時片目瞑ることはあるが、両目が覆われない分周りに注意を払いやすい。
絶対的自信があるので、この記事をここまで読んでくれる方ならぜひ最初から買うのをオススメしたいけど、ネットレンタルサービス・レンティオで扱っている。
紹介リンクから初回登録すると500円割引が受けられるので、少しでもオトクに借りて欲しい。
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- 視野が明るく、高コントラストでみやすい
ギャラリースコープトップクラスの明るさとクリアな見え方 - 長時間使っても疲れにくい
一般的な同アイテムよりも視界が広い - メガネをかけたまま使える
目に当たる部分が柔らかいシリコン素材と長いアイレリーフでメガネをしてても使える - 芸術品鑑賞に最適化した最短合焦距離
アート鑑賞を目的としてるから、焦点が合わせやすい - 小さくて軽い
首からかけても凝らない、邪魔にならない - ネックストラップ&ケース付き
- シンプルなデザイン
空海と最澄、二人の天才がぶつかる!!漫画「阿・吽」
日本仏教の要である、比叡山延暦寺の開祖・最澄と真言密教の開祖・空海。レオナルド・ダ・ヴィンチにも匹敵するといわれる天才の奔流のような人生を描いた漫画。
漫画の強みである大胆なコマ割りと心理描写の圧倒的な視覚表現で引き込まれる。ドラマチックすぎて、宗教漫画の域を越えてるね!!
私は多分、今度比叡山延暦寺や東寺、神護寺など2人のゆかりの地を訪れても、もう無の境地で観ることができないでしょう。
すでに完結してるので、一気読みできちゃいます。
日本財団の「これも学習マンガだ!」でも紹介されている。もちろんフィクションも含まれてるけど(当時の彼らの一言一句見守った人なんかいる訳ないので)、当時の歴史の流れや雰囲気を知ることができ、「神護寺展」に行く前や行った後、より深く知るのに役立つだろう。
正直試し読みくらいじゃ面白さが伝わらないけど、一度チェックしてみてほしい。
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神護寺展 情報
展示数がすごく多いと言うほどではないけど、曼荼羅をじっくり観ようと思ったら1時間では足りない。2時間は必要だ。時間に余裕を持っていくことをオススメする。
グッズは、定番のポストカードなど文具のほか、Tシャツやアクスタ、ぬいぐるみ、手塚治虫コラボアイテムがある。個人的にはふわふわの御朱印ケースがよかった。
バックプリントに仏の絵が描かれたTシャツに惹かれたが、前面に大きく神護寺と書かれていて断念。私には少しハードルが高かった。
期間 | 2024年7月17日(水)~9月8日(日) |
会場 | 東京国立博物館 平成館 |
開館時間 | 午前9時30分~午後5時 ※金曜・土曜日は午後7時まで(ただし8月30日・31日は除く) ※入館は閉館の30分前まで |
休館日 | 月曜日 |
所要時間の目安 | 2時間あるとゆっくり見られる |
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では、みなさんいい旅を😆