【京都】任天堂旧本社に泊まる。ホテル丸福樓が教えてくれる“建築偏愛の継承”

2022年、かつて「山内任天堂」の名で知られた建物が、
“泊まれる文化財”として再生した。
設計監修は安藤忠雄。昭和初期のモダンな佇まいを受け継ぎながら、
現代の感性で磨き上げられたホテル丸福樓は、
京都の新しい文化を象徴する存在になっている。
今回は、名建築を次世代に残すという試みを、建築偏愛の視点から紐解いていく。
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偏愛は、偶然の路地から始まる。
もう何年も京都を訪れているので、最近は観光地を巡るよりも、
古い建物や町の構造を“偏愛の目”で追う旅をしている。
その日も「かつて京都におわした巨大大仏の痕跡を辿る」というテーマを掲げ、
京都の路地を歩いていた。
住宅と小さな商店が並ぶ静かな通りを抜けた瞬間、
目の前に、時代を超えた存在感を放つ建物が現れた。
幾何学的な装飾、シノワズリー風の花のレリーフ、
そして控えめに掲げられた小さな看板に「山内任天堂」とある。

──そう、ここが「任天堂の原点」であり、
のちに「ホテル丸福樓」として再生された建物だ。

名建築を“泊まれる文化財”にするということ

この建物は、かつてトランプや花札を製造していた任天堂の旧本社。
建築家・安藤忠雄の監修のもと、当時の意匠を丁寧に残しながら、
現代の感性で再構築された。
館内には、かつて倉庫から発掘された木箱や調度品が再利用されており、
ラウンジや客室の随所に昭和初期のモダンな和洋折衷の風情が息づいている。
それは、単なるレトロ趣味ではなく、
“古くて新しい”時間を再編集したような魅惑の空間だ。
旧館には、かつての倉庫や当時のエレベーターがそのまま残され、
重厚で静謐な空気が漂っている。
天然石の壁や金属、陰影の深い素材感が、
長い時間を経た建物の記憶をそのまま抱えているようだ。
一方で、新館は安藤忠雄らしい打ちっぱなしのコンクリート壁と、
外光が差し込む開放的なデザイン。
歴史の重みと現代の光が、同じ敷地の中で共鳴している。
「古い建物を残す」のではなく、
「次の100年に語り継ぐ」ためのデザインがそこにある。
宿泊レビューには「また泊まりたい」「すでに2度目」という声も多く、
この場所が“特別な体験”として記憶に刻まれていることがわかる。
保存された建物が、再び人々の思い出を受け止めている──
そのこと自体が、このホテル最大の成功だと思う。
建築と遊びが同居する“京都的余白”
いまでは、客室でSwitchを持ち込んで遊ぶ宿泊客もいるという。
かつて「遊びを作った会社」の建物に、
現代の“遊び”が静かに還ってくる光景。
そのこと自体がこのホテルの最も象徴的な体験だと思う。
露天風呂付きの部屋やテラスサウナ付きのスイートもあり、
古い建物に現代の快適さを溶け込ませる設計。
ただ残すだけではなく、“暮らせる文化財”として機能しているのだ。
まちと呼吸するホテル

丸福樓のすぐそばには高瀬川が流れている。
朝、川沿いを歩くと、古い町屋とネオンのコントラストが美しい。
近くには「サウナの梅湯」という古銭湯もあり、
若い世代がリノベーションを重ねながら引き継いでいる。

まち全体が「再生」と「継承」をテーマに動いているようで、
ホテル丸福樓はその中心で静かに呼吸している。
館内というもうひとつの京都
オールインクルーシブのサービスで、
宿泊者専用のセルフバーや館内ツアーが用意されている。
2024年秋には天ぷらレストランもオープン予定。
かつての商館を思わせる構造と、安藤建築らしい光のさばき方が見事だ。
「泊まることが、その建物を未来へ渡す行為になる」
──そんな思想が、この空間全体を包んでいる。
偏愛建築が未来をつくる

2026年開業予定の帝国ホテル京都や星のや奈良監獄、
そして伊賀市の「泊船」など、
名建築を再生する宿が次々に生まれている。
観光消費の対象ではなく、文化としての“宿”が復権しつつあるのだ。
ホテル丸福樓はその象徴であり、
「偏愛の力が文化を再生させる」ことを教えてくれる場所だ。
偏愛とは、過去を讃えるだけではない。
手を取り合い、次の時代へ連れていくこと──
その小さな奇跡が、京都の静けさの中で灯っている。
本日の偏愛宿
丸福樓 -MARUFUKURO-
鴨川の流れと静寂をそのまま抱きしめるような宿。
「何もしない贅沢」を味わいたい夜に。
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